経営理念

経営理念

経営理念とは「企業の存在意義を達成するための企業活動」と定義することができます。さらに分かりやすく言いえば、「わが社は何のために存在し、活動しているのか」を表明したものと言えます。
では、なぜ経営理念が必要となるのでしょうか。それは経営上、2つの主体へのメッセージを発することが必要となるからです。

【1.従業員に発するメッセージ】

かつての高度経済成長期では、終身雇用により企業への忠誠心が生まれ、一つの会社に残り続けるためには否が応でも個々人のベクトルは一致させられていました。また大量生産・大量消費により個々の価値観やニーズはフォーカスされませんでした。
しかし、現在では終身雇用は崩壊し、かつ1to1マーケティングの時代に入ったことからも分かるように、個人の価値観が多様化しています。そして、このような状況では企業内でも個々の力が散在してしまいます。そのため、個々の力を束ねベクトル一致させる、いわゆる羅針盤が必要なのです。
その羅針盤が「経営理念」です。従業員の力を一つの目的に向かって結集させ、いわゆるプロフェッショナルとしての仕事を遂行してもらうため、「経営理念」というメッセージを発信しつづける必要があるのです。

【2.顧客、株主、地域社会といった利害関係人に発するメッセージ】

従業員に発するメッセージは対社内の話ですが、顧客等に対して発するメッセージは対外的なものとなります。(株主でもストックオプションを持つ従業員は例外とします。)
例えば顧客にとっては取引先企業が顧客満足を一番に考えている企業なのかは気になるところでしょう。
また、株主にとっては投資対象の判断をする際、利益が出ているか、または出せる会社なのかが重要なファクターになると思いますが、CSR(企業の社会的責任)についてどう考え、取り組んでいる会社なのかも判断の一つのファクターになるでしょう。
このような対外的メッセージの役割も「経営理念」は果たしてくれるのです。

以上の説明から「経営理念」の役割、重要性は理解していただけたと思いますが、紙に書いた文章だけにとどまらせ形骸化しては経営理念をせっかく作成しても意味がありません。経営理念を現実と矛盾せず、かつ浸透させることが重要なのです。

そして経営理念を浸透させるための一つの手法が理念に沿った人事制度の構築なのです。つまり、「顧客第一主義」、ないし「従業員の能力伸長、育成に重点を置く会社」といった理念を達成したいのであれば、評価基準は顧客の立場に立ってどういう行動したのかを確認できる評価制度、また従業員の能力の伸長に応じて給料を支払うシステムを構築すればよいのです。
このような理念のもとで、成果主義人事・賃金を敷いていて理念と矛盾し、浸透されないでしょう。

理念の大枠の中、あるいは理念に基づいた人事諸制度を構築していくことが活きた制度になるのです。